医者の休みが多い診療科とは？労働時間の実態や有給休暇取得状況も解説
医者は長時間労働や休日出勤が常態化し、心身の健康に負担がかかるケースが報告されています。医師にとって適切な労働環境を維持することは、医療の質を支える重要な要素です。本記事では、医者の労働時間の実態や有給休暇取得状況、診療科によって異なる労働負担について解説します。
医者の労働環境改善のためには、働き方改革関連法に準じた職場環境の見直しを行うことが、医師の休暇取得促進につながるとされています。労働基準法に則り、適切な条件で雇用契約を締結することが重要です。職場環境の改善や異動、転職などの方法も考えられます。状況に応じて最適な方法を見つけましょう。
» 日本の医療が直面している課題と解決に向けた取り組みを解説
»厚生労働省 医師の働き方改革の新制度(外部サイト)
医者の労働時間と休みの実態
医者の労働環境は一般的な職業と比べて厳しく、長時間労働になります。医者の労働時間と休みの実態について、以下の3点を解説します。
- 医者の平均労働時間
- 診療科による労働時間の違い
- 医者の有給休暇取得状況
医者の平均労働時間
医者の平均労働時間は長く、週60時間以上勤務している医者が多いのが現状です。一般的な職業と比べると、厳しい労働環境です。1日の平均勤務時間が12時間以上、当直を含めると月間300時間以上の労働も珍しくありません。休日出勤や時間外労働が多いのも特徴です。
長時間労働の背景には、医者不足や患者数の増加などの要因があります。過労死のリスクが高まるなど、医者の健康面での問題も指摘されています。大学病院や救急病院では労働時間が長く、休みでも緊急呼び出しがあり、プライベートな時間を確保しづらい状況です。
医者の労働環境改善が課題です。ワークライフバランスの実現に向けて、労働時間の適正化や休暇取得の促進などが求められています。
» 医師の労働時間とは？現状と未来を解説！
診療科による労働時間の違い
診療科ごとの労働時間の違いを以下に示します。
- 救急科・外科系：長時間労働が多い
- 精神科・小児科：不規則な勤務で当直が多い
- 産婦人科：夜間や休日対応が多い
- 眼科・皮膚科：労働時間が短い
- 放射線科・病理診断科：当直が少ない
- 麻酔科：不規則な労働時間が多い
- 総合診療科：労働時間が長い
産婦人科は夜間や休日の緊急対応が多いため、労働時間が長い傾向があります。放射線科や病理診断科は当直が少なく、規則的な勤務が多いです。麻酔科は手術スケジュールに左右されるため、労働時間にばらつきが出やすいです。総合診療科は幅広い対応が求められるため、労働時間が長いのが特徴になります。
専門性の高い診療科ほど労働時間にばらつきがあります。診療科により労働時間や勤務形態が異なるので、自分に合った診療科を選びましょう。
医者の有給休暇取得状況
医者の有給休暇取得率は、一般企業の平均取得率62.1%（令和5年度調査）と比べて低く、約40%程度と言われています。医者の有給休暇取得状況は、診療科や勤務先によって差があります。大学病院や大規模病院では取得が難しい一方、中小病院やクリニックでは比較的取得しやすい傾向があります。
有給休暇取得を阻害する要因は、人員や代替の医者不足、緊急対応の必要性などです。医者の有給休暇取得率向上は、医療の質と安全性を高めるために重要な課題です。医療安全の観点から連続休暇取得が推奨されており、働き方改革により有給取得の義務化も進んでいます。
» 医師の有給休暇の取得と課題
医者の休みが少ない理由
医者の休みが少ない理由について、以下の3点を解説します。
- 当直業務やオンコールの影響
- 医者不足の深刻化
- 高齢化社会による患者数の増加
当直業務やオンコールの影響
多くの医者が、当直業務やオンコールで長時間勤務や睡眠不足に悩まされているのが現状です。当直業務は夜間や休日に病院に待機し、緊急患者の対応や入院患者の管理を行います。当直明けに通常勤務を行うケースも多く、連続勤務になっているのが現状です。
オンコールは、いつでも呼び出しに対応する必要があります。急な呼び出しにより、行動範囲が制限されたり、十分に休憩が取れなかったりします。人員不足により、当直やオンコールの頻度が増加している診療科もあり、救急や産婦人科などの診療科では顕著です。
当直業務やオンコールにより、医者の心身の疲労が蓄積し、休暇を取得する機会が減少してしまいます。ワークライフバランスの崩れや、燃え尽き症候群のリスクが懸念されています。
» オンコールの労働時間に関する基礎知識を詳しく解説！
医者不足の深刻化
医者不足の原因は、医者の絶対数が足りていないことです。医者不足は、患者の診療や医療サービスの質に影響を与えており、地方や過疎地域では深刻な状況です。診療科によっても偏りがあり、外科系や産婦人科などでは医者が足りていません。医者不足の背景は、以下のとおりです。
- 高齢化
- コロナの影響
- 若手医者の専門医志向
- 診療科間の待遇格差
医学部定員増加や地域枠の設置などの対策が取られていますが、効果は限定的です。女性医者の増加に伴う働き方の多様化への対応も十分ではありません。医者不足は、長時間労働や過重労働の常態化につながっています。医療体制の抜本的な見直しや、働き方改革の推進が必要です。
» 医療の人手不足の解決策を徹底解説！
高齢化社会による患者数の増加
高齢化社会に伴う医療機関を受診する以下のような患者の増加は、医者の労働時間に影響を与えています。
- 慢性疾患を持つ高齢患者
- 複数の疾患を抱える高齢者
- 認知症患者
- 在宅医療や訪問診療を受ける患者
高齢者の薬剤管理が複雑化しており、処方や説明に時間を要することも原因の一つです。高齢患者とのコミュニケーションや家族への説明に時間がかかります。救急搬送される高齢患者が増加しており、緊急対応も増えています。高齢化社会における患者数の増加は、医者の働き方に課題をもたらしています。
» 医療業界の2025年問題を解説：医療機関が取るべき対策とは
医者の休みが多い診療科
医者の休みが多い診療科は、以下のとおりです。
- 眼科
- 皮膚科
- 放射線科
- 病理診断科
実際の勤務条件は医療機関によって異なるので注意しましょう。
眼科
眼科は外来診療が中心で、医者の中でも比較的休みが取りやすい診療科の一つです。夜間や休日対応が少なく、定期的な検査や経過観察などの治療が多いので、ワークライフバランスを重視しやすい診療科です。眼科医は他の診療科と比べて労働時間が規則的になりやすいですが、医療機関の状況によって異なるため注意しましょう。
皮膚科
皮膚科は外来診療が中心で、緊急性の高い診療が少なく、ワークライフバランスを重視して働けます。以下の特徴から、医者の中でも比較的休みが取りやすい診療科の一つです。
- 当直・オンコール対応が少ない
- 時間外労働が限られる
- 予約制で患者数をコントロールできる
- 短時間で完結する検査や処置が多い
皮膚科は手術や入院患者の管理が少なくなります。他の診療科と比較して労働時間が短く済み、休暇を取得しやすい職場です。慢性疾患や美容関連の治療が多く、予約制で患者数をコントロールしやすい点も特徴です。皮膚科は開業しやすく、医者としてのキャリアを積みながら、プライベートな時間を確保できます。
放射線科
放射線科は、他の診療科と比べて労働時間が短い傾向にあります。緊急対応が少なく、夜間や休日の呼び出しが少ないからです。当直明けの休みが取りやすいのも特徴です。放射線科医は他の診療科の医者に比べて、プライベートの時間を確保しやすい環境にあります。
近年の技術革新により、遠隔診断システムの導入が進んでおり、放射線科医のワークライフバランスの向上に役立っています。画像診断の業務量が増える可能性もありますが、まだまだ休みが取りやすい診療科です。
病理診断科
病理診断科は休みが取りやすく、ワークライフバランスを保ちやすい診療科の一つです。主に診断業務を行うため、緊急性が低く、規則的な勤務時間で働けます。病理診断科は他の診療科と比べて労働時間が短く、テレパソロジーの導入により在宅勤務も広がっています。
病理診断科は専門性が高く、需要も多いため、就職先の選択肢が多いのもメリットです。病理診断科は、ワークライフバランスを重視する人にとって魅力的な選択肢と言えます。
医者の休みが多い職場・働き方
医者の休みが多い職場や働き方について、以下の5点を解説します。
- 無床クリニック
- 産業医や公衆衛生医
- 健診や外来がメインの医療機関
- メディカルドクター
- 開業医
無床クリニック
無床クリニックは、比較的休みが多く取れる職場です。入院設備を持たず、外来診療のみを行うため、夜間や休日の当直がありません。勤務時間が比較的短くなる傾向があります。無床クリニックの特徴は以下のとおりです。
- 休診日を自由設定しやすい
- 休暇を取得しやすい
- 緊急対応が少ない
- 軽症度の患者が多い
無床クリニックでは専門性の高い診療に特化できるので、自分の得意分野を生かしながら効率的に働けます。開業医としての独立も比較的容易で、ライフスタイルに合わせた働き方ができます。
産業医や公衆衛生医
産業医や公衆衛生医は、臨床医と比べて休みが取りやすい職場です。企業や団体に所属し、従業員の健康管理を担当します。予防医学や健康管理に重点を置く業務や、労働安全衛生法にもとづく法定業務が主な業務です。業務は規則的で、夜間や休日の緊急対応が少ない点も特徴です。
大規模事業所での専属産業医として常勤雇用される場合と、中小企業の嘱託産業医として複数の事業所を担当する場合があります。大規模事業所も中小企業の場合も、一般的な臨床医と比べてワークライフバランスを取りやすい職場です。
健診や外来がメインの医療機関
健診や外来診療を主に行う医療機関は、勤務時間が規則的で、夜間や休日の緊急対応が少ない傾向にあります。定期健診や人間ドックが中心の業務であり、入院患者の対応が少ないからです。患者の重症度が比較的低く、検査や診断が中心で治療が少ないのも特徴です。
医者の休暇取得がしやすく、ワークライフバランスを重視した働き方ができます。当直やオンコールも少ないため、プライベートな時間を確保しやすくなります。緊急性の高い医療や専門的な治療を行う機会は限られるので、キャリアプランと相談しましょう。
メディカルドクター
メディカルドクターとは、臨床経験を生かして製薬会社や医療機器メーカーで働く医者のことです。通常の診療業務から離れて、研究開発や学術業務に従事できます。労働時間が短く休みも取りやすいのが特徴です。年収面では臨床医よりも低い場合が多いので注意しましょう。メディカルドクターの業務は以下のとおりです。
- 新薬開発
- 医療機器開発
- 学会発表
- 論文執筆
メディカルドクターは海外出張の機会も多く、グローバルな環境で働けます。キャリアチェンジの選択肢として人気がありますが、臨床スキルの維持が難しい点がデメリットです。メディカルドクターは医療の最前線で活躍しつつ、ワークライフバランスを重視して働けます。
開業医
開業医は自由な働き方ができます。自分で診療時間や休診日を決められるので、長期休暇が取りやすく、規則的な生活を送れる点がメリットです。自分のライフスタイルに合わせて働けるので、休みを多く取りたい医者にとっては魅力的な選択肢の一つです。
開業医は経営者としての業務もあるため、診療外の時間も働く必要があります。地域や診療科によっては24時間対応が求められるので、完全に自由になれるわけではありません。休暇を取りやすくするには、代替医者の確保が必要です。患者数や経営状況によっては休みにくいので、専門性や評判を高める必要があります。
医者が休みを多くする方法
医者が休みを多くする方法について、以下の3点を解説します。
- 職場環境を改善する
- 異動や転科を検討する
- 転職エージェントに相談する
患者の健康を第一に考えながら、バランスの取れた働き方を目指しましょう。
» 医師の働き方改革の問題点を徹底解析
職場環境を改善する
職場環境の改善は、医者の休みを増やすための重要な方法です。以下のような業務の効率化を図ることで、医者の負担を軽減できます。
- タスク管理システムを導入する
- チーム制を採用する
- 勤務シフトを最適化する
- 休憩時間を確保する
- 残業時間の上限を設定する
労働時間を適切に管理しましょう。有給休暇の取得を推奨したり、代替医者の確保や応援体制を整えたりすることで、休みを取りやすい環境を作れます。ワークライフバランスを重視する職場文化を育てることも大切です。ストレス管理プログラムの導入や、職場環境改善のミーティングにより、医者の心身の健康を守りましょう。
最新の医療機器や技術、電子カルテシステムの導入も業務の効率化に役立ちます。医療スタッフの増員を検討したり、医者の意見を取り入れる仕組みを作ったりすることも、職場環境を改善する方法です。
» 休憩時間が取れなかった場合の対処を徹底解説！
» チーム医療とは？メリット・デメリットと円滑に実践するポイント
» タスクシフトのメリットとデメリット
異動や転科を検討する
異動や転科を検討することは、労働環境を改善する方法の一つです。労働時間の短縮や休みを増やせます。労働時間が短い診療科や休暇を取りやすい職場への異動を検討しましょう。地域や病院規模の変更によって、労働環境が改善される場合もあります。
研究職や教育職など、臨床以外の選択肢もあります。異動や転科はリスクも伴うため、メリットとデメリットを比較検討することが大切です。
転職エージェントに相談する
転職エージェントに相談することは、労働環境を改善する有効な方法です。専門知識を持つエージェントのサポートを受けることで、自分に合った職場を見つけられます。転職エージェントを利用するポイントは以下のとおりです。
- 複数のエージェントに登録する
- キャリアプランや希望を明確に伝える
- 休暇制度や労働時間の詳細を確認する
- 医療業界特化型エージェントを利用する
医療業界に特化した転職エージェントを選ぶことで、的確なアドバイスを受けられます。転職エージェントは医者の労働環境や医療機関の特徴を理解しているので、希望に沿った職場を紹介してくれます。面接対策や履歴書作成のサポートを受けられる点もメリットです。転職後のフォローアップも受けられます。
まとめ
医者の労働環境は、診療科や職場によって大きく変わります。休日が比較的多い職場もあるので、自分に合った働き方を探しましょう。医療の質と医者自身の健康を守るためにも、適切な休日の確保が重要です。職場環境の改善や転職なども視野に入れながら、ワークライフバランスの取れた医者を目指すことをおすすめします。
医者不足や高齢化など、社会的な課題は働き方を見直すことで良くなります。業務効率を上げ、自身の健康と患者の健康の両方を大切にして働きましょう。