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【適切な報酬を貰えていないかも】勤怠管理で知っておくべき法律を徹底解説

  • 残業が多くて賃金が少ないのは良くない?
  • 労働基準法について詳しく知りたい
  • 会社に残業代の請求を考えているから知識を増やしたい

職場の勤怠管理が適切でなければ、賃金も適切でない可能性があります。この記事では、労働基準法に基づく勤怠管理のルールについて解説します。最後まで読むと、正しい勤怠管理を理解でき、労働に対して適切な報酬が得られているかを確認可能です。

適切に勤怠管理できていない企業は多いです。労働基準法に基づく勤怠管理のルールを理解すれば、無用なトラブルを回避して、良好な環境で働けます。

勤怠管理が法律で義務付けられている理由

労働者の権利保護と健康管理のため、勤怠管理が法律で義務付けられています。正しい勤怠管理は、適正な条件下での労働を保証するために欠かせません。勤怠管理が適正に機能するメリットは以下のとおりです。

  • 公平な労働環境の提供
  • コンプライアンス向上
  • 労働生産性の維持と向上
  • ワークライフバランスの確保

勤怠管理のルールを明確にすると、労働者の権利を守れます。企業としての長期的な労働生産性の維持と向上にもつながります。
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勤怠管理に関する主な法律

企業が法的な勤怠管理のルールを遵守すれば、労働者の権利保護や健全な労働環境の維持が可能です。以下の2つの法律を押さえましょう。

  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法

労働基準法

労働基準法は、労働者の労働条件を最低限保証するための法律です。労働者の適切な労働環境を確保するための規定は以下のとおりです。

  • 労働時間や休憩時間、休日や残業時間の規定
  • 割増賃金の支払い義務
  • 年次有給休暇の付与

規定に違反する企業は、労働基準監督署から行政指導(指導や勧告、助言)を受ける可能性があります。行政指導を受けると、優秀な人材の確保や、関連企業からの信頼に悪影響を与えます。
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労働安全衛生法

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守るための法律です。労働時間の客観的な把握や健康診断の実施義務など、労働者の健康管理について規定しています。労働安全衛生法では、企業に対して以下の義務や規定を設けています。

  • 労働時間の客観的な把握義務
  • 健康診断の実施義務
  • 安全な労働環境の整備

企業では、労働安全衛生法に基づき、定期的なストレスチェック制度の導入が必要です。健康診断結果の管理なども重要です。
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労働基準法で定められた勤怠管理のルール

勤怠管理のルールは労働基準法の各条項で定められています。勤怠管理に関わる条項は以下の6つです。

  • 労働時間の管理(労働基準法第32条)
  • 休憩時間の管理(労働基準法第34条)
  • 休日の付与(労働基準法第35条)
  • 残業と時間外労働の管理(労働基準法第36条)
  • 割増賃金の支払い(労働基準法第37条)
  • 年次有給休暇の付与(労働基準法第39条)

労働時間の管理(労働基準法第32条)

労働基準法第32条では、1日の労働時間を8時間まで、1週間の労働時間を40時間までと定めています。企業が労働者に定めた時間を超えて働かせる(時間外労働)場合は、36協定の締結が必要です。時間外労働をさせる場合は、企業は割増賃金を支払う義務があります。

時間外労働には、45時間/月・360時間/年の上限があります。原則、時間外労働の上限を超えて働かせることはできません。特定の業種や職種では例外的に超過が認められるケースがあります。しかし原則的に超えてはいけません。

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休憩時間の管理(労働基準法第34条)

休憩時間の管理は、労働者の健康と労働環境の改善が目的です。労働基準法第34条に基づき、労働時間に対する休憩時間は以下のように定められています。

  • 労働時間が6時間を超える場合の休憩時間:45分以上
  • 労働時間が8時間を超える場合の休憩時間:1時間以上

労働者への一斉の休憩時間付与が原則ですが、労使協定がある場合には、個別に与えるケースもあります。休憩時間中は労働者の自由が保障されなければなりません。休憩時間の正しい管理は、企業の労働環境の質を高めるだけでなく、労働者の満足度や生産性の向上にも役立ちます。

休日の付与(労働基準法第35条)

企業は労働者に対し、少なくとも週に1回以上の休日を与えなくてはなりません。連続的な労働は疲労の蓄積を招き、労働の生産性や安全性を低下させるからです。休日を適切に設定すると、長期的に労働災害などのリスクを軽減できます。

週1日以上の休日を確保できない場合は、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。企業は、経営と業務配分のバランスをとり、労働者の健康と労働能力の回復を図る必要があります。

残業と時間外労働の管理(労働基準法第36条)

会社は労働者に残業や休日労働をさせる際、労働者と36協定を結ぶ必要があります。36協定では月45時間、年間720時間の範囲内での、時間外労働や休日労働時間上限の明示が必要です。

36協定の締結には労働組合または、労働者の過半数によって選ばれた代表の同意が必要です。会社は36協定を適切に運用し、労働者の権利を守りながら、健全な職場環境を維持しなければなりません。適切な残業管理は、従業員のモチベーションや生産性向上に役立ちます。

割増賃金の支払い(労働基準法第37条)

労働者が時間外労働をした場合は、一定の割増賃金を支払う義務があります。労働基準法第37条に基づいた割増賃金の割合は以下のとおりです。

  • 時間外労働:25%以上
  • 深夜労働(午後10時~午前5時):25%以上
  • 休日労働:35%以上

20日間、毎日2時間の時間外労働をした場合で計算してみましょう。通常の時給が1,000円の場合、40時間の賃金は40,000円です。時間外労働で25%の割増賃金となるため、10,000円の加算が適正です。企業は適正な割増賃金を支払う必要があります。

違反すると、労働基準監督署からの行政指導の対象になる可能性があります。

年次有給休暇の付与(労働基準法第39条)

年次有給休暇は、6ヶ月間継続勤務して労働日の8割以上出勤した場合に、10日の年次有給休暇が付与される規定です。1年単位で、全労働日の8割以上出勤するたびに有給休暇が1日ずつ増え、最大で20日まで付与されます。

パートタイムやアルバイトにも、勤務日数に応じた年次有給休暇が付与されます。労働者の権利である有給休暇を積極的に使用して、過労やストレスを防ぎましょう。

労働安全衛生法で定められた勤怠管理のルール

労働安全衛生法は、長時間労働による過労死や過労自殺の深刻化を背景に定められています。労働者を守るために重要な法律です。労働安全衛生法で定められた主な勤怠管理のルールは、以下のとおりです。

  • 客観的な記録による労働時間の把握義務
  • ストレスチェックの実施義務
  • 健康診断の実施と結果の記録保存の義務
  • 産業医の選任と活動記録保存の義務
  • 長時間労働者への面接指導義務
  • 労働者の健康管理措置の実施義務
  • 安全衛生管理体制の整備と運用義務

労働安全衛生法は上記のように、さまざまな義務を定めて労働者の保護を図っています。労働者に直接的に関係する「客観的な記録による労働時間の把握」の義務が特に重要です。

客観的な記録による労働時間の把握義務(労働安全衛生法第66条の8の3)

客観的な記録による労働時間の把握は、労働安全衛生法第66条の8の3に基づき、企業に義務付けられています。客観的な記録による労働時間の把握義務の目的は、労働時間を正確に記録し、長時間労働やサービス残業の防止を図ることです。企業が労働時間を客観的に把握するために、以下のような記録媒体が活用されます。

  • タイムカード
  • ICカード
  • パソコンのログイン/ログアウト記録

上記の記録媒体は、労働者の健康状態を適切に管理し、過労死や過労自殺のリスクを減らすために有効です。労働時間の記録は最低3年間の保存が必要です。企業が労働時間の客観的な把握を怠ると、法律違反で罰則を受ける可能性があります。
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勤怠管理の法律に違反した場合の罰則

労働基準監督署は、労働基準法などの労働関係法令の遵守を監視する機関です。勤怠管理における法律違反は労働基準監督署による行政指導の対象であり、罰則が科される場合があります。労働基準法に違反した場合の流れについて解説します。

労働基準監督署による是正勧告や指導

勤怠管理における違反は、労働基準監督署の是正勧告や是正指導の対象です。以下で是正勧告と是正指導について詳しく解説します。

是正勧告
是正勧告とは、違反事項を改善するよう企業に指示する文書です。企業は文書に従い、具体的な是正措置を期限内に対処し、是正報告まで完了する必要があります。是正勧告自体には法的拘束力はありません。
是正指導
是正指導とは、企業が自発的に法令を遵守するよう、文書や口頭で助言や指導をすることです。是正勧告とは違い、あくまで企業の自主的な改善を促すことが目的です。是正指導にも法的拘束力はありません。

企業と労働者にとって、労働基準監督署の是正勧告や指導を適切に受け入れた上での、迅速な改善策の推進が重要です。健全な労働環境の維持は労働者の健康と安全を守り、生産性の向上につながります。

法律による罰則

労働基準法は、労働者の健康と安全を守ることを目的としており、勤怠管理の法律に違反すると厳しい罰則が科されます。罰則の対象となる違反は以下のとおりです。

  • 法定労働時間を超えて労働させた場合
  • 休憩時間が不十分な場合
  • 未払い賃金がある場合
  • 割増賃金の不払いがある場合
  • 年次有給休暇を付与していない場合

企業が是正勧告や指導を無視し続けると、労働基準監督署から告発される可能性があります。労働基準法違反は重い罰則だけでなく、社会的信用も失うため以降の経営が難しくなります。労働者側でも、ルールを守る企業なのか見極めが必要です。

社会的評価の低下

現在は社会的にコンプライアンスが重視されており、行政指導による社会的評価の低下は、企業にとって深刻な問題です。勤怠管理の法律に違反した場合、以下の悪影響が考えられます。

  • 社会的信頼の喪失
  • 新規採用・人材確保への悪影響
  • メディア報道によるネガティブな影響
  • 株価の下落
  • 社員のモラル低下
  • 利害関係者からの圧力・批判
  • 市場退出のリスク

労働基準監督署から行政指導を受けると、企業は是正措置の対処に時間が取られます。通常業務が滞るだけでなく、社会的信用も失いかねません。得意先との取引停止や、優秀な社員の獲得が難しくなるのは企業にとって致命的です。法律違反による社会的評価の低下は、さまざまな悪影響を及ぼします。

勤怠管理の法律に関するよくある質問

勤怠管理の法律にについてよくある質問を解説します。意外な事例も紹介しますので、今後の勤務のあり方に役立てください。

着替え時間は労働時間に含まれる?

労働基準法では、仕事を開始するために必要な準備時間も労働時間に含めています。業務に必要な制服や防護服であれば、着替え時間も労働時間の一部です。労働基準法を根拠に、制服や作業服などの業務に直接関連する着替え時間は労働時間である、と認めた裁判例もあります。

労働時間の丸め処理は違法?

労働時間の丸め処理とは、労働時間の端数の切り上げや切り捨てです。労働時間の丸め処理は簡便な方法として広く採用されていましたが、労働基準法違反となる可能性があるため注意が必要です。以下に丸め処理の事例を紹介します。

従業員Aの勤怠管理
・所定労働時間:1日8時間、1か月20日勤務
・1日当たりの実労働時間:8時間15分
・1か月当たりの実労働時間:165時間
従業員Aの勤怠管理の丸め処理後
1か月当たりの実労働時間:160時間

上記の例では、1日当たり15分が端数として丸め処理されています。1ヶ月で5時間分の労働が切り捨てられており、違法です。時給1,000円で換算した場合は、年間で6万円も切り捨てられています。

労働時間は、1分単位での管理が原則です。丸め処理は時間が経つほど労働者の利益を損ねます。行き過ぎた丸め処理には、迅速な対処が必要です。

1日の労働時間が8時間1分の場合は?

1日の労働時間が8時間1分の場合、法定労働時間を超えるため時間外労働とみなされます。法定労働時間は8時間と定められており、労働時間は1分単位での管理が原則です。ありがちな労働時間の計算方法を以下に詳しく解説します。

労働基準法では、1日の労働時間を8時間、週の労働時間を40時間と定めています。8時間/日かつ40時間/日を超えた場合は時間外労働に当たり、週6日勤務は割増賃金の対象です。企業は25%の割増賃金の支払い義務がある点を押さえましょう。

1分でも超過労働があった場合は、超過分に対して1.25倍の割増賃金が支払われます。8時間労働後の1分間の残業でも、割増賃金が支給されます。1週間の労働時間が40時間を超える場合も、同様に割増賃金の対象です。

まとめ

労働基準法や労働安全衛生法は、労働者保護を目的とした法律です。違反した企業は、労働基準監督署から以下の行政指導や罰則を科される可能性があります。

  • 是正勧告や是正指導
  • 刑事罰や行政罰

行政処分には法的拘束力がありませんが、告発に発展すると重い罰則を避けられません。労働基準法を遵守しない企業は社会的評価が下がり、人材の確保や取引先との関係悪化から経営が難しくなります。企業の勤怠管理が適切かを判断するには、企業が法律を遵守しているかの見極めが必要です。

自分を守るためにも必要な法律の知識を身に付けましょう。