充実した看護記録の効率的な書き方について徹底解説!
- 看護記録の書き方に自信が持てない
- 効率的な記録方法を知りたい
- 患者の情報を適切に記録するのが難しい
看護記録は看護師の重要な業務ですが、適切な書き方に悩む方も多いです。本記事では、項目別や形式別に看護記録の書き方を解説します。ポイントを押さえた記録の書き方や効率的な方法、注意点についても説明します。
記事を読めば、看護記録の基本から応用までを理解し、業務の質と効率を向上させることが可能です。看護記録は、患者の状態を正確に把握し、適切なケアを提供するための重要なツールです。適切な記録方法を身に付けることで、チーム医療の質を高め、患者へのより良いケアにつながります。
【項目別】看護記録の書き方
看護記録は、患者の健康状態や治療経過を正確に記録し、医療チーム内で情報を共有するための重要なツールです。基礎情報や看護計画、経過記録、要約などの項目があり、適切に記録することで質の高い医療サービスを提供できます。それぞれの項目について解説します。
基礎情報(データベース)
基礎情報は、患者の基本的な情報を集めた重要な資料です。全体像を把握するために必要な情報が含まれています。
基礎情報に含まれる情報は以下のとおりです。
- 患者の基本情報
- 症状と病歴
- 生活習慣と体の状態
- 日常生活の詳細
- 社会的背景と個人的希望
基礎情報には、患者の基本情報、病歴、アレルギーの有無、服薬状況を記録します。日常生活の動作の状況や食事の状態、トイレの状況、睡眠の様子、心の状態などの日常生活に関する詳細な情報も含まれます。仕事や家族構成などの社会的な背景や患者の希望、心配事といった情報も記録することがあります。
基礎情報は患者の全体像を把握し、適切な医療やケアを提供するために重要な情報です。
看護計画
看護計画は患者の健康状態を改善するための重要な道しるべです。患者の問題点や看護目標を明確に記載し、具体的な看護ケアの内容を記載します。短期目標と長期目標を設定することで、段階的な改善を目指せます。看護計画を立てる際の注意点は以下のとおりです。
- 優先順位
- 状態変化に応じた修正
- 多職種連携
- 評価基準と方法
患者や家族の意向を反映し、エビデンスに基づいて個別に適した計画を立てましょう。実施可能で現実的な計画を立てることで、より効果的な看護ケアが提供できます。定期的な見直しと更新を行うことが、患者の状態に合わせた適切な看護計画の維持に必要です。
経過記録
経過記録は、患者の状態変化を時系列で記録する重要な部分です。観察結果や実施したケアを記述することで、患者の状態を正確に把握できます。経過記録を書く際は、以下の点に注意してください。
- 客観的事実と主観的判断の区別
- 医療用語や略語の適切な使用
- 読みやすい簡潔な文章
- 重要情報や異常値の強調
他職種との情報共有を意識し、看護計画と整合性を保ちながら患者の反応や言動を記録します。定期的な記録と随時記録を使い分けることで、より正確な経過が追えます。
記録者の署名や記録時間を明記するのも忘れないようにしてください。
経過記録を適切に行うことで、患者へのケアの質が向上し、チーム医療の効率化にもつながります。プライバシーに配慮した表現を心がけながら、必要な情報を選択して記録しましょう。
要約(サマリー)
要約(サマリー)は、患者の状態や治療経過、看護ケアを総括する重要な記録です。要約の目的は、患者に関する重要な情報や変化を簡潔にまとめ継続的なケアに必要な情報を含めることです。退院時や転院時に役立ちます。
多職種間での情報共有にも活用できるので、患者の全体像を把握しやすい形式で記述することが大切です。要約を作成する際のポイントは以下のとおりです。
- 患者の基本情報
- 主な症状や経過
- 実施した治療や看護ケア
- 今後の課題や注意点
要約は次のケアプランや治療方針を立てる際の参考になり、法的記録としての役割も果たします。定期的に更新し、客観的な事実と専門的な観察を適切に記録することで、質の高い要約の作成が可能です。
【形式別】看護記録の書き方
看護記録には、SOAP形式やDAR形式、POS形式、経時記録形式などさまざまな形式があります。看護記録は患者の状態を正確に記録し、適切な看護ケアを提供するために開発されました。各形式の特徴を理解し、状況に応じて最適な記録方法が選択できるためのポイントを解説します。
SOAP形式
SOAP形式は、患者の状態を整理し体系的に把握できる記録方法です。SOAP形式は以下の4つの要素から成り立っています。
- S(主観的データ):患者の訴えや感じていること
- O(客観的データ):観察や測定で得られた事実
- A(アセスメント):収集したデータの分析と評価
- P(プラン):問題解決のための計画
SOAP形式だけでなく、他の記録形式も状況に応じて使い分けることが大切です。SOAP形式は、患者の状態を細かく記録できる反面、書くのに時間がかかります。緊急時や忙しい時間帯には、より簡潔な記録方法を選びましょう。
DAR形式
DAR形式は、患者の状態や看護師の対応を簡潔かつ明確に記録できる看護記録の書き方です。
DAR形式の特徴は以下の3つです。
- Data(データ)
- Action(アクション)
- Response(レスポンス)
DAR形式を使うことで、患者の状態変化や看護ケアの効果を時系列で追跡できるようになります。しかし、DAR形式を効果的に活用するには、注意すべきポイントがあります。客観的な事実と主観的な解釈を明確に区別して記録することが大切です。数値データを記録する際は、必ず単位を明記してください。
患者の言動を直接引用する場合は、括弧で囲んで記録しましょう。患者の声を正確に残せます。
POS形式
POS形式は患者の状態を正確に把握し、看護記録を体系的に管理するための効果的な方法です。POS形式を活用する流れは以下のとおりです。
- 問題の特定
- 目標の設定
- 計画の立案
- 実施
- 評価
POS形式は、看護師さんは患者の健康上の問題を明確にし、具体的な目標を立てられます。目標に向けた計画に沿ってケアを行い、結果を評価していきましょう。
POS形式の利点は、看護プロセスを論理的に進められることです。患者の状態変化にも柔軟に対応できるので、質の高い看護ケアにつながります。ただし、記録に時間がかかるため、場合によっては効率的な記録方法を選択する必要があります。
経時記録形式
経時記録形式は、患者の状態や行われた処置を時系列で記録する方法です。経時記録形式の特徴は、日付と時間を明確に記載し、観察結果や実施した看護ケアを記述することです。経時記録形式を使うと、患者の状態の変化を詳しく追跡できます。時系列順に記録する情報の例は以下のとおりです。
- バイタルサインの変化
- 投薬の内容と時間
- 患者の症状や訴え
- 行った処置や検査の結果
客観的な事実と看護師の主観的な解釈を区別して記録しましょう。他の医療スタッフが記録を読んだときに、状況を正確に理解できるようにするためです。ポイントは、略語や専門用語を適切に使用し、読みやすい文章で簡潔に記述することです。必要に応じてグラフや図表を活用すると、情報がよりわかりやすくなります。
充実した看護記録の書き方
充実した看護記録は、患者のケアと医療チームの連携に不可欠です。正確で詳細な記録を書くためには、患者の状態をよく観察し、主観と客観を区別して論理的に記述することが重要です。医療用語や数値を適切に使用し、患者の言葉を引用することも意識しましょう。充実した看護記録の詳しい書き方を解説します。
患者の容態や病状を把握する
患者の容態を正確に把握し、多角的に観察・記録することは、適切な看護ケアに不可欠です。
注目すべき患者の容態や病状、ポイントは以下のとおりです。
- バイタルサインの測定と記録
- 患者の主観的症状の聴取
- 客観的な身体所見の観察
- 検査結果の確認と解釈
- 治療内容と反応の把握
患者の容態や病状を総合的に分析することで、患者の全体像を把握できます。身体面だけでなく心理面も観察し、不安や恐れに配慮しましょう。日常生活動作(ADL)の確認や栄養状態、排泄状況、睡眠パターンなども重要な観察ポイントです。
痛みの評価には、スケールを使用すると客観的な記録が可能になります。皮膚の状態や褥瘡リスクの確認も忘れずに行いましょう。薬剤の効果と副作用の観察や、アレルギー情報の確認も重要です。
患者の容態や病状の情報は、安全な医療を提供するうえで欠かせません。家族や介護者から情報収集を行うことも必要です。患者を取り巻く環境や生活状況を知ることで、より適切なケアを提供できます。
事実を明確に記録する
事実を明確に記録することは、看護記録の質を高めるうえで重要です。客観的な観察結果を正確に記載することで、患者の状態を適切に把握し、適切な看護ケアにつなげられます。時系列に沿って正確な数値を記録しましょう。ポイントは、客観的な観察結果を記載し、主観的な解釈は避けることです。
バイタルサインの記録では具体的な数値を記入し、患者の訴えは「」で括り正確に記録します。観察した事実と看護師の判断は明確に区別して記載しましょう。異常や変化があった場合は、詳細に記述してください。使用した医療機器や薬剤、他職種からの情報も適切に記載する必要があります。
わかりやすい表現にする
看護記録を書くうえで、わかりやすい表現を使うことは重要です。患者の状態を正確に伝えるだけでなく、他の医療スタッフにも理解しやすい内容である必要があります。簡潔で明確な言葉を使い、専門用語はできるだけ避けましょう。一般的な略語のみを使用し、箇条書きを活用して短い文章にまとめるとわかりやすくなります。
患者の症状を記録する際、効果的な書き方の例は以下のとおりです。
- 38.5度の発熱
- 右胸部の痛み
- 浅く頻繁な呼吸
看護記録は、要点をまとめることで患者の状態が一目で把握できるようになります。
わかりやすい表現を心がけることで、医療チーム全体のコミュニケーションが円滑になり、より質の高い患者ケアにつながります。
患者への配慮を忘れない
看護記録は、患者の尊厳を尊重し、プライバシーに配慮した記述を心がけることが大切です。注意すべきポイントは以下のとおりです。
- 患者の感情や心理状態
- 患者の希望や要望
- 文化的背景や価値観
- 家族や介護者の情報
患者に対する偏見や先入観を排除し、客観的な記述を心がけることもより良い患者ケアにつながります。患者の権利を尊重し、インフォームドコンセントの内容を適切に記録することで、患者中心の医療を実践できます。患者の言葉をそのまま引用する際は、慎重に判断した内容を記述することが重要です。
患者の強みや回復の可能性にも注目しましょう。ポジティブな側面も記録することで、より良い看護につながります。患者の個別性を考慮し、画一的な記述を避けることも大切です。一人ひとりの患者に合わせた丁寧な記録を心がけることで、質の高い看護を提供できます。
効率的な看護記録の書き方
効率的な看護記録の書き方は、看護師の業務を円滑にし、患者ケアの質を向上させる重要な要素です。適切な方法を用いることで、時間を節約しつつ、正確で役立つ記録を残せます。効率的な看護記録の書き方に役立つポイントを解説します。
オープンクエスチョンを使う
オープンクエスチョンを使うと、患者の考えや感情を引き出せるため、効率的な看護記録を作成するうえで重要です。オープンクエスチョンとは「回答の範囲を制限しない質問」です。「はい」や「いいえ」で回答できる質問を避け「旅行はどこに行きたいですか?」など、自由に答えられる質問が該当します。
オープンクエスチョンを使うと、短時間で効率良く情報を集め、患者の優先順位や価値観を把握できます。予想外の問題点や心配事を見つけられる可能性があるため、患者中心の看護やより良いケアプランの作成が可能です。
バイタルサインはすぐに記録する
バイタルサインの測定後、すぐに記録することは患者さんの状態を適切に把握するために重要です。
バイタルサインを記録する際のポイントを以下に紹介します。
- 測定値を正確に書く
- 時間と日付をはっきりと書く
- 異常な値があればすぐに伝える
- 定期的に測ることを習慣にする
測定機器を正しく使い、患者の状態に応じて測定回数を調整しましょう。記録する際は、常に決まった形式で書くと効率的です。電子カルテを使えば、すぐに入力できるので便利です。バイタルサインをすぐに記録することで、患者さんの健康状態の変化にいち早く気づけます。
目標の記録数を明確にする
目標の記録数を明確にすることは、効率的な看護記録作成の鍵です。明確な目標を設定することで、記録作業の効率が大幅に向上します。まずは1日の目標記録数を決めることから始めましょう。作業の進捗状況を把握しやすくなります。
時間帯ごとの記録目標を立てると、より細かな管理ができます。患者ごとに記録目標を設定することも効果的です。以下の項目に注目すると、明確な目標を立てるのに役立ちます。
- バイタルサインの記録回数
- 投薬の記録
- 患者の状態変化の観察
記録の優先順位を付けることは重要です。緊急性の高い情報から順に記録していくことで、抜け漏れを防げます。定期的に目標達成度を確認し、必要に応じて目標を調整することも大切です。
看護システムを活用する
看護システムを活用することで、看護記録の作成が効率的になります。電子カルテシステムの導入により、データ入力の手間の大幅な削減が可能です。看護記録の作成時間短縮に役立つ機能は以下のとおりです。
- テンプレート機能:定型文を簡単に挿入
- 音声入力機能:手書きよりも素早く入力可能
- リマインダー機能:記入漏れの防止
- アラート機能:重要な情報の見逃しを回避
- データ分析機能:他部門との連携強化
- 自動バックアップ機能:データの安全性の確保
看護システムを活用することで、看護記録の作成がより効率的になり、患者ケアに集中する時間を増やせます。
看護記録を書く際の注意点
看護記録を書く際の注意点として、患者さんの個人情報保護と適切な管理が重要です。情報漏洩防止と個人情報保護、削除・改ざんの防止、保存期間と管理方法の3つを意識しましょう。看護記録を書く際の注意点について解説します。
情報漏洩防止と個人情報保護
情報漏洩防止と個人情報保護は、看護記録を扱ううえで最も重要な課題です。患者の大切な情報を守るために、さまざまな対策が必要となります。情報漏洩防止と個人情報保護に効果的な対策は以下のとおりです。
- 患者情報の取り扱い
- アクセス制限
- パスワード管理
- 電子カルテのセキュリティ
しっかりとした対策で情報漏洩のリスクは大幅に減らせますが、技術面だけでは十分ではありません。スタッフ一人ひとりの意識向上も重要です。定期的な個人情報保護教育を行い、SNSでの患者の情報共有を避けるなど、日々の業務における注意点を徹底する必要があります。
記録媒体の適切な廃棄や、外部からの不正アクセス防止など、幅広い観点からの対策が求められます。定期的なセキュリティ監査を実施し、常に最新の脅威に対応できる体制が大切です。個人情報保護法の遵守はもちろんのこと、患者の同意確認と記録、匿名化処理の徹底なども忘れてはいけません。
万が一、情報漏洩が発生した場合の対応手順も、あらかじめチームで共有しておきましょう。
削除・改ざんの防止
看護記録の削除・改ざんを防ぐことは、適切な方法で記録を管理し、患者の安全と医療の質を守るために重要です。削除・改ざんの防止に有効な対策を以下に紹介します。
- 二重線での訂正
- 修正液・消しゴム不使用
- 空白部分への斜線
- 追記時の日時・署名記入
電子カルテを使用している場合は、ログ管理を徹底し、記録の変更履歴を残すことが大切です。アクセス権限を適切に設定し、定期的なバックアップを実施することで、より安全な記録管理ができます。改ざん防止機能のあるシステムを使用することも効果的です。システムだけでなく、記録の重要性と法的責任について職員教育を行うことも忘れてはいけません。
看護記録の信頼性と正確性を維持するためにも、適切な対策を行うことが重要です。
保存期間と管理方法
医療機関は、法律に則った看護記録の保存期間と管理方法を遵守しなければなりません。医療法施行規則では、看護記録の保存期間は原則2年間と定められており、保存期間を守ることで、適切な医療サービスの提供と法的な要件を満たせます。
保存方法は、電子カルテと紙媒体の2種類です。電子カルテは定期的なバックアップが必須で、紙媒体の記録は施錠可能な場所で保管する必要があります。共通した管理方法の注意点は以下のとおりです。
- アクセス権限の設定
- 定期的な監査と記録の実施
- 廃棄時の処理
紙媒体の廃棄時はシュレッダーや溶解処理を行います。災害対策として、複数箇所での保管も検討しましょう。保存期間終了後も、患者の同意があれば延長できます。記録の保存・管理に関する院内規定を作成し、遵守することが大切です。
まとめ
本記事では、看護記録の項目別・形式別の書き方や充実した記録のポイント、効率的な記録方法、注意点などを詳しく解説しました。看護記録は患者さんの健康状態を正確に把握し、適切な看護を提供するために欠かせないものです。
適切な看護記録は、情報共有を円滑にし質の高い看護ケアを実現します。個人情報保護や情報漏洩防止には、十分注意を払いましょう。看護記録は単なる事務作業ではなく、患者の健康と安全を守るための重要なツールです。丁寧に取り組むことで、より良い看護ケアが行えます。