看護師の勤務表を作成するポイント【夜勤や残業を管理しよう】
看護師の勤務表は病院運営に必要不可欠です。しかし、勤務表を作成する作業は予想以上に複雑です。
この記事では、看護師のシフトの特徴と勤務表作成のポイントを解説します。記事を読むと、スタッフのニーズを満たしつつ、病院運営に必要な人員配置をする方法が理解できます。
看護師の勤務表を作るときに知っておくべきこと
看護師の勤務形態には、以下の2つがあります。それぞれの違いを理解することが、勤務表作成の第一歩です。
- 二交代制
- 三交代制
二交代制シフトの特徴
二交代制シフトは、日勤と夜勤の2つに分ける勤務形態です。看護師は平均して12時間働きます。二交代制シフトの特徴は、勤務間隔が長いため休息時間を確保しやすい点です。三交代制と比較して夜勤の回数が少なく、生活リズムの安定に繋がる効果もあります。
患者とのコミュニケーションが取りやすいのもメリットの一つです。 スタッフの数が比較的少なくて済むため、病院側の人員配置がしやすい点もメリットと言えます。
一方、長時間の勤務は体への負担が大きくなる可能性が高いです。長い労働時間に対する適切な労務管理が求められます。
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三交代制シフトの特徴
三交代制シフトは24時間を3つのシフトに分ける勤務体制であり、各シフトの勤務時間は通常8時間です。勤務時間は早番、遅番、夜勤に分けられます。一日を通じてシフトが回転することで、職場が24時間体制で運営されます。患者ケアの連続性を確保しやすい点がメリットです。
三交代制シフトには、定期的な休日が取りやすいというメリットもあります。二交代制に比べて夜勤の頻度が少ないため、夜勤に負担を感じるスタッフにとって魅力的な勤務体制と言えます。ただし、シフトの回転が速く、体調管理が難しいのも事実です。
三交代制シフトでは従業員が多く必要になるため、人員確保が重要です。シフト変更が多いと勤務表の作成が複雑になる傾向があります。体調不良や急な休みによって、シフトの穴が生じやすい点にも注意が必要です。
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看護師の勤務表を作成するポイント
看護師の勤務表を作成するポイントは、以下の4つです。
- 休み希望の取り扱い
- 夜勤・休日勤務の調整
- 公平性を保つための配分
- 緊急時にも対応できるシフト調整
休み希望の取り扱い
スタッフの満足度を保ちつつ、効率的なシフト管理を行うためには、休み希望についてのルールを明確にすることが求められます。公平な方法で休みを分配しましょう。
具体的な方法は、以下の通りです。
- 休み希望は早い段階で収集する
- 書面または電子システムで休み希望を提出させる
- 休み希望の提出期限を設け、ルールを明確にする
- 好ましい休日の分配を考慮する
- 休み希望の優先順位を設定する
休み希望は、提出期限までに書面や電子システムを通して収集します。連休や単発の休日など、希望のバランスを考慮してください。家族行事や試験などの理由によって、優先順位を設けるのも一つの方法です。
勤務表を作成する際には、業務の必要性と個人の希望の調整を図りましょう。休み希望が重なった場合には、交代要請やシフトトレードの機会を提供することで、解決策を提示します。休暇中の代替スタッフの確保計画を立てると、スタッフ不足による業務への影響を最小限に抑えられます。
夜勤・休日勤務の調整
夜勤及び休日勤務は、看護師の勤務体系において必須の要素です。看護師の健康と仕事の質を維持するためにも、適切に調整する必要があります。
夜勤の回数をスタッフ間で均等に配分し、休日勤務に偏りがないよう考慮することが重要です。個々のスタッフの体調やプライベートを尊重したうえで、調整してください。夜勤明けには、適切な休息を確保することが大切です。夜勤後の日勤へのシフトチェンジについて、ガイドラインを設けましょう。
スタッフが不公平さを感じないためには、休日出勤に対する手当やインセンティブの明確化が欠かせません。連続勤務とならないよう、注意してシフト組むことも意識しましょう。繁忙期など特定の時期に勤務を集中させないことも、大事なポイントです。
公平性を保つための配分
看護師の勤務表を作成する際には、スタッフ一人ひとりが公平に働けるよう配慮することが重要です。勤務時間や勤務日数の均等化を目指してください。
夜勤や休日勤務についても、公平になるよう調整しましょう。長期的なバランスを保つために、過去のシフトデータを活用します。スキルレベルや経験年数を考慮した割当も必要です。
休暇取得においても、平等性を確保することが大切です。スタッフ間のコミュニケーションを促進し、希望や制約を理解すると、働きやすさと職場のニーズのバランスが取れます。勤務表の作成過程や結果をスタッフに説明・公開することにより、不公平感を軽減できます。
緊急時にも対応できるシフト調整
緊急時にも対応できるシフト調整は、スタッフの健康と患者の安全を守るために重要です。計画的なシフト調整により、予期せぬ事態が発生した際にも、迅速かつ適切な対応ができます。具体的な方法は、以下の通りです。
- 予備スタッフのリストを作成する
- オンコールシステムを導入する
- スタッフ間でのシフト交換システムを整える
- 緊急時対応手当てやインセンティブを設定する
- 緊急時のシフト調整プロトコルを確立する
緊急時には予備スタッフのリストや、オンコールシステムを導入することなどが役立ちます。緊急時対応手当やインセンティブを用意すると、スタッフのモチベーションが保てます。
ITツールを活用してシフトを整えることも、緊急時の対応力を高める上ではおすすめです。チーム内での役割や責任を明確にし、スタッフのスキルや資格を適宜活用することも、緊急時の効率的な対応を支えます。
緊急時の連絡手段や流れは全スタッフが理解し、すぐに行動に移せるようにしましょう。緊急時にも柔軟に対応できるよう、シフトに余裕を持たせることも欠かせません。作成した勤務表は、スタッフ全員にとって透明性が保たれるよう公開することがおすすめです。
看護師の勤務表を作成するときの課題
看護師の勤務表を作成する際には、主に3つの課題があります。課題を放置すると、医療スタッフの健康や患者へのケアの質に直接影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
- 夜勤・残業の管理
- スタッフのワークライフバランス
- 法規制への対応
夜勤・残業の管理
夜勤や残業の管理は、スタッフの健康と安全を守るために極めて重要です。連続勤務や過度な残業、夜勤が多すぎると、心身の負担になります。
夜勤の回数と時間は公平に分配し、十分な休息時間を確保しましょう。残業管理の徹底と、残業時間の記録も怠らないようにしてください。適切な夜勤・残業ポリシーを設定し、ポリシーに従うことが求められます。夜勤手当や残業手当の適切な支払いも欠かせません。
夜勤・残業の管理においては、シニアスタッフとジュニアスタッフのバランスを考慮したシフト割り振りも重要です。長期的な人員計画を立て、夜勤や残業の影響を評価しましょう。スタッフ間のコミュニケーションを強化し、夜勤や残業に関するフィードバックを取り入れると、チーム全体で問題を解決できます。
スタッフのワークライフバランス
ワークライフバランスの維持は、職場の満足度と離職率に直結します。看護師の生活の質を高めるためには、個人の時間を大切にしながら仕事を続けられる環境を整えることが大切です。
具体的には、以下の対応が求められます。
- 休暇をしっかり取得できるように調整する
- 生活リズムや個々の事情を考慮した勤務表を作成する
- シフトを公平に配分する
- 緊急時のシフト変更にも迅速に対応できる体制を整える
夜勤や長時間勤務が、スタッフの健康や家庭生活、社会生活に悪影響を与えないように配慮する必要があります。休暇をしっかりと取得できるような勤務表を作成しましょう。スタッフ一人ひとりの生活リズムや、個別の事情を考慮してください。育児や介護など、個人的な責任を抱えているスタッフへの配慮も欠かせません。
シフトの公平な配分を心がけることは、スタッフ間の不公平感をなくし、モチベーションの維持に繋がります。緊急時のシフト変更にも迅速に対応できるような柔軟性を持たせることも大切です。
法規制への対応
看護師の勤務表を作成する際には、法規制を遵守してください。労働基準法によって定められた労働時間、休憩時間、休日に関するルールを守る必要があります。夜勤回数に関する規制も適用されるため、制限を超えないよう注意しましょう。
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時間外労働には「36協定」の適用があり、時間外労働の上限が定められています。パートタイムや有期雇用労働法など、特定の雇用形態に関する法規制も遵守してください。産休や育休の取得に関する法律に則り、長期休暇を取得するスタッフのためのシフト調整が不可欠です。
時間外労働による割増賃金の適切な適用と、スタッフとの事前の協議も欠かせません。最低限の連続休日数の確保、看護師の健康診断の義務付けなど、労働者の健康を守るための配慮が必要です。
看護師の勤務表を作成する手順
看護師の勤務表を作成する手順は、以下の通りです。
- 勤務希望の収集
- 勤務表の初期案作成
- 最終勤務表の確定と公開
勤務希望の収集
まずはアンケートや面談を通じて、勤務希望を収集します。以下の情報を集めてください。
- フルタイム・パートタイムの希望勤務時間帯
- 休日や連休の要望
- 夜勤の有無
- 夜勤や特定曜日の出勤希望
収集方法には協調性を持たせることが大切です。看護師同士でシフトを調整してもらう場合があるからです。定期的なスケジュールで実施勤務希望を集約することで、効率的かつ公平な勤務表を作成できます。
看護師個々のニーズにできるだけ対応したシフトを組むことを目指しましょう。育児や介護など、プライベートの事情に配慮が必要です。
集めた情報はデータベースや表に整理し、勤務表作成の基にします。
勤務表の初期案作成
続いて、スタッフの勤務希望を基に初期案を作成します。各スタッフの資格、スキル、経験を考慮し、最適な職場環境で働けるように配置を決めてください。
勤務形態が二交代制や三交代制シフトの場合、原則に従ってシフトを組むことが不可欠です。夜勤や休日勤務が均等になるように調整し、スタッフ間の公平性を保ちましょう。休暇と勤務のバランスにも配慮が必要です。公正な割り当てを心がけると、スタッフの満足度向上に繋がります。
緊急時に迅速に対応できるよう、余裕のあるシフトを作ることが大切です。初期案作成後は、必要に応じて微調整を行いながら、最適な勤務体制の実現を目指します。各スタッフの勤務時間が、法的規制に適合しているかを確認してください。他スタッフとの調整が必要な場合は、コミュニケーションを取りながら修正を進めます。
最終勤務表の確定と公開
初期案に必要な修正を加えて、最終勤務表を確定します。勤務表の正確性を保つためには、最終的なチェックが必須です。確認する項目は、以下の通りです。
- 看護師のスケジュールや希望
- スタッフ間での勤務調整や変更希望の反映
- 法規制や勤務規則に違反していないか
最終勤務表が確定したら、看護師に公開し、掲示や電子的な形で配布してください。勤務表の公開方法は、事前に選定しておきましょう。
公開後の変更に対する更新の流れの確立と、フィードバックの管理方法もあわせて整えると、スムーズに勤務表を運用できます。適切な準備と確認を行うことで、順調な勤務体制の維持が実現します。
まとめ
看護師の勤務表作成は複雑です。効率的かつ公平に勤務表を作成するためには、二交代制や三交代制のシフトの特徴を深く理解しなければいけません。スタッフの休みの希望を適切に考慮し、夜勤や休日勤務のバランスを取りましょう。
公平性を保持するための勤務配分や、緊急時に柔軟に対応可能なシフト調整も重要な要素です。スタッフのワークライフバランスを配慮したスケジュール作りは、労働法規を遵守と職場環境の向上に繋がります。
勤務表作成の手順は、以下の通りです。
- 勤務希望を効率的に収集する
- 初期案をもとに勤務表を作成する
- 最終勤務表を確定し、適切に公開する
一連の流れをスムーズに進めることが、良好な労務管理を実現するための鍵です。
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