【看護師が不足している原因】人材確保に向けた対策！
看護師不足が深刻化する昨今、医療現場の人材確保は大きな課題です。この記事では看護師の人材確保と労働環境の改善方法について解説します。看護師不足は医療サービスの質に直接影響を与える重要な問題です。
記事を読めば、看護師の人材確保と働きやすい環境づくりのヒントが得られます。適切な対策を講じれば、看護師不足の解消は可能です。
看護師が必要な理由
看護師の人材確保は、医療サービスの質と安全性の維持のために必要不可欠です。適切な数の看護師を確保することで医療サービスの質が向上し、効率的に病院を運営できます。看護師の人材確保の重要性については、以下を参照してください。
- 看護師は患者の健康と安全を守る役割がある
- 看護師不足は医療サービスの質の低下を招く
看護師は患者の健康と安全を守る役割がある
医療現場の看護師は、患者の健康と安全を守るためにさまざまな役割を担っています。看護師の具体的な業務は以下のとおりです。
- 患者のケアと全身状態の観察
- 医療処置の補助と実施
- 医師との連携と情報共有
- 患者家族へのサポートと説明
- 看護計画の立案と実施
- 看護記録の管理と更新
- 感染予防と衛生管理
- 緊急時の対応と判断
- チーム医療の調整
- 患者の精神的ケア
- 医療機器の操作と管理
- 薬剤投与と管理
- 患者教育と退院支援
- リハビリテーションの補助
- 医療安全の確保
上記を見てわかるように、看護師は多くの業務をこなす必要があります。
看護師不足は医療サービスの質の低下を招く
看護師不足は医療現場において深刻な問題です。看護師一人当たりの業務負担が増えることで看護の質が低下し、医療ミスのリスクが高まります。残業時間が増え、看護師の疲労が蓄積することも問題です。緊急時の対応の遅れなどの問題も起こりやすくなります。
看護師不足により入院患者の受け入れを制限するケースも出てきています。看護師の労働環境は過酷です。心身ともに負担が増えることから看護師の離職率が上がり、さらに人手不足が進むといった悪循環に陥りやすくなります。
看護師不足は病院経営にも悪影響です。人件費の増加や医療サービスの縮小により、経営が圧迫される恐れがあります。地域医療全体に影響が及ぶ可能性があるため、看護師不足の解消は医療現場にとって大きな課題です。
看護師が不足している原因
看護師が不足している主な原因は以下のとおりです。
- 看護需要の増加
- 過酷な労働環境
- 賃金の低さ
- 長時間労働
看護需要の増加
日本は2007年に超高齢社会に突入しました。今後も高齢者率は高くなると予想されており、医療や介護の需要が拡大しています。慢性疾患や複数の病気を抱える患者は増加傾向です。高齢者施設や在宅医療・介護サービスなど病院以外の場でも看護師の需要が高まっています。
高齢者特有の症状や病気に対応するためには、専門的な看護スキルが必要です。介護や看護が必要な期間が長くなり、高齢者の生活の質を向上させるためのサービスも重要になりました。多職種連携の中で、看護師が関わる役割も大きくなっています。
超高齢社会の日本において、看護師の需要は量と質ともに拡大しているのが現状です。
過酷な労働環境
看護師の働く環境は、以下のように多くの課題を抱えています。
- 長時間労働や夜勤の多さ
- ストレス過多な環境
- 人手不足による過重労働
- 患者や家族とのコミュニケーションの負担
- 医療事故のリスク
- 感染症への曝露のリスク
看護師の労働環境は過酷なため、体力的・精神的な負担が大きいのが現状です。ワークライフバランスの取りにくさや、キャリアアップの機会が不足していることも課題です。医師や他のスタッフとの人間関係の難しさも、看護師の働く環境を厳しいものにしています。
» 看護師の2交代制と3交代制のメリット・デメリット
状況を改善して看護師が働きやすい環境を整えることが、医療現場の質の向上につながります。
賃金の低さ
看護師の賃金は、他の医療職と比較して低い水準です。経験年数に応じた昇給が限定的で、専門性や資格に見合った報酬体系が不足しており、長年働いても給与が大きく上がりません。以下の要因により賃金に対する満足度が低く、離職の一因となっています。
- 夜勤や休日出勤の手当が少ない
- 残業代が適切に支払われない
- 地域や施設による賃金格差が大きい
- 福利厚生が充実していない
給与体系の透明性が低いことも問題です。看護師の人材確保のためには、成果や能力に応じた報酬制度の整備など、賃金面での改善が急務です。適切な待遇を提供することで、優秀な人材の確保と定着につながります。
看護師の賃金問題は、医療現場の質と安全性にも直結する重要な課題です。待遇を改善すれば、看護の質の向上にもつながります。
長時間労働
看護師の労働時間は医療現場の特性により長時間化しやすい傾向です。長時間労働が常態化している背景には、以下の要因が挙げられます。
- 夜勤や交代制勤務が多い
- 時間外労働が頻繁に発生する
- 休憩時間が十分に取れない
- 人手不足により残業や休日出勤が増える
有給休暇の取得率が低いことも、看護師の労働環境の厳しさを表しています。労働時間の問題を解決するには、業務量に見合った人員配置や労働時間管理の徹底が必要です。看護師の労働時間を適切に管理し、働きやすい環境を整えることが人材確保につながります。
» 看護師が知っておくべき労務管理
看護師の人材確保に向けた対策
看護師の人材確保は、医療サービスの質の維持に不可欠です。看護師の人材確保に向けた対策は、以下のとおりです。
- 国や自治体の支援の活用
- 外国人看護師の採用
- テクノロジーの導入
- 働きやすい環境の構築
国や自治体の支援の活用
さまざまな支援制度を活用すれば、看護師の確保や育成、定着率の向上につながります。国や自治体では看護師の人材を確保するために、以下のような支援策を用意しています。
- 補助金制度
- 養成施設への財政支援
- 離職防止・復職支援プログラムの実施
- 処遇改善への助成
- 地域医療介護総合確保基金
- ナースセンターを通じた就業支援
- 奨学金制度
- 研修・キャリアアップ支援事業
- 施設整備補助
- 地方勤務奨励金制度
補助金を活用して看護師の給与を改善したり、復職支援プログラムを実施して潜在看護師を掘り起こしたりすることが可能です。看護師個人を対象とした支援策には、ナースセンターを通じた就業支援や奨学金制度などがあります。
研修・キャリアアップ支援事業や施設整備補助など、看護師の働きやすさを向上させるための支援も用意されています。国や自治体の支援策は多岐にわたるため、施設に適した支援を選択して積極的に活用しましょう。支援策の詳細は、各自治体の担当部署に問い合わせて確認することをおすすめします。
外国人看護師の採用
外国人看護師の採用は、看護師不足を解消するための有効な対策の一つです。外国人看護師を採用する方法は2つあります。EPA(Economic Partnership Agreement：経済連携協定)に基づく受け入れと、在留資格｢特定技能｣による採用です。
≫ 厚生労働省(外部サイト)
外国人看護師を受け入れる際は言語や文化の違いに配慮する必要があります。以下のようなサポート体制を整えることが大切です。
- 日本語教育
- 通訳の配置
- 宗教や生活習慣への配慮
- 国家試験対策支援
- 住居確保・生活支援
外国人看護師が日本の医療現場になじめるように、教育・研修の実施やスタッフ間のコミュニケーション促進を図る必要もあります。キャリアパスを明確にして適切な待遇を提供するなど、外国人看護師の定着率を高める取り組みも必要です。
外国人看護師の採用は、単に人材不足を解消するだけでなく、多様性のある職場環境を作り出す機会にもなります。地域社会と連携を図り、外国人看護師と地域住民との交流を促進することで、互いの文化理解が深まります。
テクノロジーの導入
テクノロジーの導入は、看護師の業務効率化と負担軽減に効果的です。最新技術を活用すれば、看護師の人材確保にも役立ちます。具体的には以下のようなテクノロジーの導入が考えられます。
- AIやIoT
- 電子カルテシステム
- 遠隔医療・遠隔看護
- ウェアラブルデバイス
- 介護ロボット・搬送ロボット
上記のうち電子カルテシステムは、広く普及しているテクノロジーの一つです。電子カルテシステムは記録作業時間を大幅に短縮できるだけでなく、施設内のあらゆる面での業務効率が向上します。遠隔医療・遠隔看護は移動時間を削減し、感染リスクを低減できます。
» 看護管理システムとは？機能と導入メリットを解説
ウェアラブルデバイスとは、身体に機器を装着して心拍数や心臓波形などの生体情報をリアルタイムで計測する端末のことです。腕時計やメガネ、指輪、衣服など、さまざまな形のウェアラブルデバイスが開発されています。遠隔で患者をモニタリングできるため、常時観察が必要な患者の状態把握に役立ちます。
介護ロボットや搬送ロボットを活用して、看護師の身体的負担を軽減することも重要です。テクノロジーの導入は看護師の業務効率を高めるだけでなく、働きやすい環境づくりにも貢献します。看護師の離職防止や新たな人材の確保につなげるためにも、積極的にテクノロジーを導入することをおすすめします。
働きやすい環境の構築
働きやすい職場環境は、看護師の人材確保と離職防止のために欠かせません。具体的には以下のような取り組みが効果的です。
- フレックスタイム制の導入
- リモートワークの選択肢を提供
- 業務の効率化・自動化と負担の軽減
- 休憩スペースの充実など職場環境の整備
- チーム制の導入によるサポート体制強化
- 定期的な面談や意見交換の場の設置
- キャリアパスの明確化
- 継続的な教育・研修プログラムの提供
- ワークライフバランスを重視した勤務シフト
- 福利厚生の充実
- 職場内のコミュニケーション促進
- ストレス軽減のための取り組み
上記のようにさまざまな方面から対策を取ることで、看護師の仕事のモチベーションが向上します。人材の確保と定着率の向上のためには、看護師にとって魅力的な職場環境を作り出すことが重要です。
» 看護師の働き方改革による変化と課題
看護師の人材を確保する方法
看護師の人材を確保する方法は、以下のとおりです。
- 理想と現実のギャップを解消する
- 研修体制を整備する
- 継続した教育の場を提供する
- 職場内のコミュニケーションを強化する
理想と現実のギャップを解消する
多くの新人看護師が理想と現実のギャップに直面し、離職しています。ギャップを解消するためには以下のような取り組みが必要です。
- 入職前に職場見学や体験実習を実施する
- 新人教育プログラムを充実させる
入職前の職場見学や体験実習は、実際の業務内容や職場の雰囲気がわかる良い機会です。新人看護師は心の準備ができるため、入職後のショックを軽減できます。新人教育プログラムでは、段階的にスキルアップできるように現実的な目標を設定し、新人看護師の自信を育てます。
定期的に面談して、早い段階で悩みや不安を把握することも大切です。理想と現実のギャップを解消し、看護師の定着率を向上させましょう。
研修体制を整備する
新人看護職員研修では、段階的に知識や技術を習得できるように体系的な研修プログラムを作成すると効果的です。具体的な取り組みとしては、以下のような方法があります。
- プリセプター制度
- メンター制度
- シミュレーション訓練
- 定期的な振り返りと評価
多くの病院ではプリセプター制度を導入しています。先輩看護師が新人看護師に対して日々の業務を一対一で指導するため、きめ細かなサポートが可能です。メンター制度では年齢や経験の近い先輩が新人看護師の相談に乗り、指導や助言をします。新人看護師は技術を身に付けながら職場になじみやすくなるなどのメリットがあります。
シミュレーション訓練では、実際の医療現場を想定した環境で技術の習得が可能です。失敗を恐れずに練習できるため、自信をつけやすくなります。積極的に取り入れましょう。研修の一環として取り入れるだけでなく、看護師が自習できる環境を整えることをおすすめします。
新人看護師の成長を具体的に把握して必要なサポートをするためには、定期的に振り返りと評価を行うことが大切です。体制を整備して新人看護師の成長を支援することで、早期離職を防げます。
継続した教育の場を提供する
看護師のモチベーション維持と定着率向上のためには、継続的に学べる場を提供することが重要です。研修プログラムや認定資格取得の支援では、最新の医療技術や知識を習得できます。スタッフ間で定期的にケーススタディや事例検討会を開催することもおすすめです。経験の浅い看護師は、スキルの向上に役立ちます。
他施設との交流や外部セミナーへの参加は、新人看護師が視野を広げる良い機会です。継続的な教育の場を提供することで看護師の専門性と技術力が向上し、医療サービスの質の向上にもつながります。新人看護師の育成と既存スタッフのスキルアップにより、質の高い安定した医療サービスを提供できます。
病院や医療施設の長期的な発展のためには教育環境の整備が不可欠です。
職場内のコミュニケーションを強化する
職場内でのコミュニケーションが良好だとチームワークが向上して職場の雰囲気が良くなり、看護師の定着率が高まります。チーム制の導入や定期的なミーティングは、質の高い看護を提供するためにも重要な取り組みです。
他職種との連携強化も大切です。円滑なコミュニケーションは看護の質が向上するだけでなく、仕事のやりがいにもつながります。患者や家族とより良い関係を築くためには、看護技術だけでなくコミュニケーションスキルを磨く必要があります。研修などでコミュニケーションスキルを学ぶ機会を設けましょう。
看護師が働く環境を改善する方法
看護師の働く環境改善は、医療サービスの質向上と離職防止に重要です。看護師が働く環境を改善する方法は、以下を参考にしてください。
- 勤務条件を改善する
- メンタルヘルスサポートを充実させる
- 子育てを支援する
勤務条件を改善する
勤務条件の改善は、看護師の人材確保と定着率向上に大きな効果があります。柔軟なシフトの導入や残業時間の削減、有給休暇の取得促進など、看護師のワークライフバランスの改善が必要です。
» 看護師の勤務表を作成するポイント
給与面の改善も重要です。看護師の専門性や経験に見合った給与水準の見直しや、福利厚生の充実を図ることで、モチベーションの向上につながります。キャリアアップの機会も提供しましょう。看護師が自身の成長を実感できる環境を整えることで、定着率が向上します。
看護師にとって魅力的な職場環境を作り出すことで優秀な人材の確保と定着につながり、医療サービスの質が向上します。
メンタルヘルスサポートを充実させる
看護師の仕事はストレスが多く、メンタルヘルスケアは欠かせません。職場でのストレス要因を特定し、改善を図ることが大切です。上司がスタッフをサポートできるよう、管理職向けにメンタルヘルスマネジメント研修を実施することもおすすめです。
メンタルヘルス関連の情報提供や啓発活動は、看護師自身の意識も高めます。定期的にストレスチェックや面談を実施することも、問題の早期発見・対応に役立ちます。
子育てを支援する
多くの看護師が妊娠・出産や子育てを理由に離職しているため、子育て支援体制の強化は必須です。さまざまな取り組みを行っている医療機関もありますが、まだまだ十分とは言えないのが現状です。
育児休業制度の取得のほか、夜勤の免除や時短勤務、シフト調整など、子育て中でも仕事と家庭を両立しやすくなってきました。しかし、勤務の調整だけでは子育て支援として不十分です。病児保育サービスの提供や、育児に関する相談窓口の設置も重要です。
まとめ
看護師不足が深刻化している主な要因は、超高齢社会の進行や労働環境、賃金、労働時間などが挙げられます。看護師の人材を確保するためには、さまざまな対策が必要です。特に労働環境の改善や適切な賃金は、現場で働く看護師のモチベーションの向上に直結します。
看護師不足を解消するためには、総合的なアプローチを通じて問題解決に取り組むことが重要です。看護師の職場満足度が高まれば、新卒看護師の採用だけでなく、経験豊富な看護師の再就職先としても有効です。